みっかぶり




なんて泣き虫。
もう三日も雨は降り止まない。
おかげでダンテとのデートが延び延びになってしまっている。
これが六回目、曇りガラスの露を払ってみても、やっぱり外はまだざあざあ降り。
「止まないね」
「止まねぇな」
わたしはピンクグレープフルーツジュース、ダンテはトマトジュースを片手に溜め息をこぼした。



デートコースなんて決めてない。
バイクに乗って、その後の行き先はダンテ任せ。
高速道路を走る日も、海岸沿いを走る日も。
ふたりとも、どこかへ行きたいわけじゃない。



ジュースのグラスはどちらも空っぽになった。
このグラスみたく、空に蓄えられた水は空っぽにならないんだろうか。
もうずいぶん長いこと、地面は水を飲んでいるけれど。
「ダンテ、おかわりは?」
自分のグラスと彼のグラスを持って立ち上がる。
「いらない」
「そう」
キッチンへ向かおうとした、わたしの肩をダンテが押さえた。
「出掛けようぜ」



雨の中、バイクは盛大に水飛沫を上げる。
傘もレインコートもなしで、視界を遮るのは安っぽいヘルメットのゴーグルと、それへ滴る雨の粒。

──風邪引くよ。
──こんな部屋でくすぶってるより、健康的だろ?



くしゅ。
ちいさくくしゃみしたら、ごちんとふたりのヘルメットがぶつかった。
「「ごめん」」
なんでだか同時に謝ってしまった。
ダンテがわたしの腕を包むように握る。
たっぷり水分を含んだグローブ。
それでもつめたいとは感じない。
「片手運転、あぶないよ」
「じゃ、しっかり捕まってろ」
ダンテが再び手をハンドルに戻す。
言われた通り、ヘルメットが邪魔だけど彼の背中におもいきり抱きついた。



雨はまだまだ止みそうもない。
ふたりとも、たぶん風邪を引くだろう。
だけど三日振りのこのデートは素敵だ。

「楽しいね」
「最高だろ」

派手に水を蹴散らして、またバイクのスピードが上がった。







→ afterword

とっても短い断片夢でした。
またどこかで書くと思いますが、ダンテとタンデムしたいです。

ダンテは、動かしにくいものを動かす…というか、何かを打破する力を持っていると思います。

短いお話でしたが、お読みいただいてありがとうございました!
2008.10.5