幸せへの第一歩






ふれれば脆く



口に含めば甘い



砂糖菓子のように





スウィート





「うん、そうよ。………だって残業押し付けられちゃったから。………心配しなくても浮気なんかしないよ。」
携帯の画面は青白く光る。暗闇に浮かび上がる口元。
淡いピンク。
グロスが光を反射させ、若干青みがかったピンクになっていた。
「ねぇ………迎えにきてくれない?」
携帯からは男の不満が漏れる。
「いいじゃない、囲まれちゃったみたいなの。夜にたっぷりとお礼するからさ。」
切るが早いか、向こうが早いか。悪魔が飛び出すのは一秒後だった。
「ダンテに言わせればショウタイムかしら?」
女は横っ飛びに、バックから拳銃を取り出す。照準を悪魔に合わせた。
「Bye...」
数匹のうち一匹は砂へ還る。
「もうあんまり弾が残ってないんだけどなぁ。」
女は困り気味に笑みを浮かべた。





「ふー、助かった……ありがとダンテ。」
ダンテは悪魔から大剣を引き抜く。
が無事ならいいって、もちろんお礼はたっぷりとしてくれんだろ?」
「下心丸見えよ?」
は鞄に銃をしまう。スーツには傷どころか、埃一つついてない。
「お前1人でも大丈夫だったんじゃないか?」
ダンテはバイクにまたがり首で促す。はその意図を読み取り、ダンテの後ろにまたがった。
「冗談、弾の数が足りなかったわ。」
「それくらい補助しとけよ。」
風に銀の髪がなびく。触ればくしゃりと柔らかく、絹のような手触りだ。
「どうした?俺の髪にゴミでもついてたか?」
「うん、でっかい赤いゴミがバイクを転がしてる。」
はダンテを小突いた。
「おいおい、そりゃあ俺のことか?」
「ううん、違った。かっこいいお兄さんが乗ってた。」
バイクは更に加速する。
「当然だろ。」





「やっと着いたわね。」
「ああ」と帰ってくる肯定の返事に、巻き付いてくる筋肉質な腕。
どうやら彼はやる気満々らしい。
「今すぐお礼するわ。」
は笑ってダンテにキスをする。
「随分と焦ってるな、そんなに早くやりたかったか?」
ダンテの手がワイシャツのボタンにかかる。はその手を叩き落とした。
「ええ、善は急げって言うじゃない?」
その割には行動と言葉が合っていない。ダンテは頭に疑問符を浮かべる。
(まぁやる事は決まってる。)
とりあえず様子見にダンテは事務所のソファーに腰掛けた。
(ここでヤるのも悪くないな。)
これから起こるであろう事に口元を釣り上げ、の方へ振り返る。当然、もシャワーを浴びたいだけだったのだろうと思ったが、予想とは違い台所へ入っていく。
?」
そっと後ろから台所を覗けば、はイチゴアイスと生クリームを出していた。
「お前………そういうプレーが好きなのか?気づいてやれなく「違うわよ!!!!」」
それらは数分とたたず組み合わされ、特大のイチゴサンデーが出来上がる。
「凄くおいしいイチゴソースを頂いたから、ぜひダンテにと思って。」
花のように笑うにダンテも微笑んだ。
「ああ、サンキュ。」
ダンテはの耳に形のいい唇を押し当て、低くささやいく。
の顔が赤くなった。そのまま柔らかい耳たぶを甘噛みし、ゆっくりと舐める。
「でもこれは冷蔵庫に入れておいて、早くお礼してくれよ。」
ダンテお得意のムードになってきたのだが、はそれをぶち壊す。
「お礼?今したじゃない。特大のストロベリーサンデーに、たっぷりと特製のイチゴソースをかけて。」
ダンテはポカーンと口を開けていたが、すぐに正気を取り戻した。
何が何でもと夜を過ごしたいらしい。
「はっ?お礼って言やぁ、もっとイイコトだろ?」
は大きなため息をつく。
「じゃあストロベリーサンデーはいらないのね?」
細い指がストロベリーサンデーに手をかける。
「誰もそんなこと言ってねぇだろ。」
ダンテはその手を掴んだ。
「食べるならこれが精一杯のお礼だから。」
ぐっと言葉に詰まり、ダンテは形のいい眉を寄せる。





「ふふふ、ちょっとイジメすぎたかな?」
長いこと続くかのように思われた睨み合いも、の笑い声で終わりを迎えた。
「ったく、人が悪いっつの。」
すっかり甘い雰囲気は吹き飛び、ダンテはガリガリと頭をかく。一本取られたとでも言うかのように、ばつの悪そうな顔をしていた。
「まぁでも本当の所は、パスしたいわね。」
「ん?今日はアレの日なのか?」
「違うわ、私が生理不順なのはダンテも知ってるじゃない。そうじゃなくて、明日は朝早くから仕事なのよ。」
ダンテは嫌そうにシワを深めた。
「仕事?んなの止めちまえばいいだろ?」
「そんなこと言われても、お金が無かったら生きていけないのよ?」
は聞き分けのない子供を諭すように説明する。
「だからさ、俺が何とかするって。」
「何とかって言われても。」
沈黙が痛く胸にささり、なんとなく居づらい空気だった。

「あー、分かんねぇかなー。」

ダンテは照れ隠しのように頭をかき、視線を逸らす。だが解るわけもなく、はその続きの言葉を待った。

「俺は二人分の食いぶちくらい稼げる。だから、…………一緒にいてくれ。」





「よかったのか?」
シーツがもぞもぞと動く。ダンテの横からが這い出した。
首筋や、胸元にくっきりと赤い痕がのこっている。それらは昨夜の激しさを物語っていた。
「いいも何も、貴方を信じて良いんでしょう?」
眠い眼をこすりながら、ダンテの胸に額を押し付ける。

「ああ、幸せにするさ、必ずな。」

太いうでは細い体を大事そうに抱きしめる。絶対放すまいと力を込めた。
「お偉いさんたちのセクハラにも、出来のいい秘書を演じるのにも飽き飽きだわ。」



「よろしくね」と、誓いの口付けを交わしたのは、やさしい光の降り注ぐ暖かい朝だった。







御礼

蜜貴様より相互記念に頂いた、二つ目のダンテ夢です!!!

あああ、こちらのお話も素敵すぎますダンテ!!!可愛くてカッコいいです...!!
ダンテは一度覚悟を決めたら、絶対に幸せにしてくれると思います。
既にこのお話でとても幸せになれました…!!

蜜貴様、それぞれ魅力的なダンテ夢、本当にありがとうございました!
感謝してもしきれません。
今後とも、どうぞよろしくお願い致します!!