形のない幸福




ある朝の出来事。

「なぁ、って…何が好きだと思う?」

ソファに座っていたダンテの一言から議論は始まった。
向かい側のソファで、新聞を読んでいたバージルは。
何をいきなり、といった表情で彼を見返した。
その視線に気付いたダンテは、話を続ける。
が共に住むようになってから、明らかに生活が快適になったと言う。
食事や掃除、洗濯をして貰えるのは勿論だが。
今までは、タオルもベタベタになってから洗っていたが、今はいつ触れてもフカフカの物が掛かっている。
部屋に脱ぎ捨てた服も、いつの間にか洗われて、アイロンがけしてある。
他にも、とにかく気が利く彼女。
…ちなみに、噂のは、只今レディと買い物に出掛けている。
「…それで、お前はどうしたいのだ…?」
いつまで経っても結論を言わないダンテに、溜め息を漏らしたバージルは、先を促した。
「だ…だから、何か礼をしたくねぇか?いつもの感謝って言うかさぁ…。」
モゴモゴ口ごもるダンテに、バージルは吹き出しそうになるが。
「まぁ…悪くない。」
それだけ言うと、一つ咳払いをして、口元を抑え堪えた。
それに気付かないダンテは、そうだろ?とウンウン頷き、早速作戦を考え始める。
成る程、それで冒頭の台詞か…とバージルは回想した。
「…でもよぅ…。」
ふいに、ダンテが少し情けない声を出した。
「…何だ、その声は…。」
「俺、の好きな物…知らねぇや…。」
「…確かに…俺も分からん…。」
二人は、やや肩を落として…腕を組みながら考えた。
しかし、分からない物は、分からない。
やがて、沈黙に耐えかねたダンテが口を開いた。
「いっその事、本人に聞くか!」
その言葉に、眉間に皺を寄せるバージル。
「それでは意味がなかろう。」
その一言で、却下した。
「じゃあどうすんだよ!」
「それを考えるのだろうが、愚弟め!」
「愚弟言うな!冷血!」
「喧しい!」
とうとう、口論が始まってしまった。
そこへ…

「ただいま~ぁ。」

買い物袋を抱えたとレディが帰って来た。
それにより、口論は止まったものの、不穏な空気は収まらず。
が自室へ消えたのを見計らい、レディが原因を尋ねた。
すると、何とも微笑ましい内容ではないか。
内密に、と双子に言われたものの…これは…悪戯してみたい!
レディは、二人の為に考えるふりをしながら、そう企んでいた。
そこへ、自室からが戻って来た。
「ねぇ、。」
レディが何気なく声を掛ける。
「なぁに?」
振り返る彼女と、それを見守る双子。
「バージル達が、いつもの御礼ににキスしたいってさ!」

「…えっ?」
「なっ…!」
「おい…!」

これには、三人共固まった。レディだけは、ニヤニヤしている。
それから、赤面した双子に叱られたレディは、笑いながら事務所を後にした。



原因を双子から聞いたは、苦笑しながら言った。
「そんなの気にしないで。私は二人といるだけで楽しいし、幸福だから。」
彼女が欲しい物は、形のない幸福で。願うのは、その日常が続く事。
その言葉に嬉しくなったバージルとダンテは、彼女の頬にキスを贈った。
ささやかな願いを守り続ける、誓いのキスとして…。







御礼

「GREEN TEA」様との相互リンクの記念に、早瀬様に双子夢を書いていただいちゃいました!

うわわわ、双子に頬ちゅーされちゃってますよ!!
どどどうしよう!(落ち着け~!笑)
双子が自分のために真剣に悩んでくれるのって、泣きたくなるほどしあわせなことですよね!

早瀬様のトリップヒロイン連載は、どのお話もほんわかとあったかい気持ちになれて、しあわせです(*´∀`*)
早瀬様、素敵な夢をどうもありがとうございました!!!