遮光ガラス越しの茶色い風景に目をやって、バージルは重々しく溜め息をついた。
「……はまた遅刻か」
ダンテは読んでいた雑誌をぱたんと閉じた。待たされるのは慣れっこだ。
「女の子はいろいろ支度があんだろ。せっかちなのは嫌われるぜ」
有難いご高説に、バージルはじろりとダンテを睨む。
「そういう貴様は最近遅刻しなくなったな」
「あんたも身支度がぱりっとしてるよな」
「俺はいつもきっちりしているだろうが」
「そうかぁ?じゃ、オレの記憶違いだなー」
長や役員がいない今、彼らの不毛な口喧嘩は終わらない。
これから仕事が待っているというのに殺伐とした雰囲気が立ち込めかけたとき、
「遅くなりました!!」
ばあんと扉を押し開けて、ようやく彼らの待ちわびていた人物が登場する。
「騒々しい」
バージルが言葉とは裏腹に物腰やわらかく立ち上がれば、
「さ、今日も稼ぐとするか」
ダンテは機嫌の良さを隠そうともせず颯爽と立ち上がる。
休ませていた武器を佩いて、ふとを振り返る。
「そうだ、
「はい!」
の報酬の取り分について、バージルと話したんだ」
な、バージル?と訊ねられ、バージルは一瞬目を細めたが、すぐにきっぱり頷いた。
「ああ。矢張り三等分という訳にはいかん」
「それは、もちろん!」
もこくりと同意する。
ただでさえお荷物の身、そこまで高望みしていない。
「あの、それで……?」
「「二割」」
ダンテとバージルの声が揃った。
「二割……そんなにいいんですか」
何だか拍子抜けだ。
それを聞くや否や、
「なら一割だな」
バージルがころりと態度を変えた。
「え、ええっ?たった今、二割だって」
「ちょっと甘過ぎかもなって迷ってたんだ」
ダンテも飄々と何度も頷く。
「ま、いいだろ。オレ達と動く限り、命の心配はいらねぇし」
「そうですね……」
一割でも、自分一人でこなす依頼よりも遥かに稼げるのだから。
はにっこりと晴れやかな笑顔を見せる。
「それで、今日は私は何を?」
さわやかな声音。
そんなを前にやれやれと溜め息をついたのは、双子の方。
「おまえは怪我などしないように」
「後方支援だな」
「支援?ボウガンを射てばいいんですか?」
「それは要らん」
バージルがきっぱりと切り捨てた。
「とすると?」
きょとんと目をまるくしたに、ダンテが芝居がかって腕を組み、それからウインクしてみせる。
「応援でもしてろって事だ」
「応援!?」
支援よりも意味不明。
は眉根を寄せて真剣に悩み込んでしまった。
そんな彼女に、ダンテもバージルも同時に吹き出す。
薄給は、出来るだけを引き留めるためだけに。
支援は、万が一でもに危険が及ばないように。
今までの味気ない仕事はあざやかに急転し──

はどちらを向いてくれるだろうか?)

ひどく楽しいものになりそうだった。







→ afterword

115000&120000hitsをご報告して下さったセイラ様に捧げます!

リクエスト頂いた通り4双子、のつもりでした。4。…4?
バージルがどう成長するのかあれこれ考えましたが、あのまま更に渋く気難しくなるだけで、特に急激な変化もなさそうで…代わり映えしないという結果になってしまいました;
しかもダンテも…バージルがいるとどうしても賑やかさや行動が3寄りになってしまいました。き、きっと気分が若返るんですy
ルシフェルは個人的な趣味で暴走しました。すみません…。
ケルベロスは、4ダンテが使ったらどうなるかなあと書いてみました。さすがに足で回してToo easy!はない(だろう。ないよね?)と思って投げてもらいました。すみません…
4双子は懲りずにまた書いてみたいです。

セイラ様、お渡しが遅くなってしまいまして、本当に申し訳ございませんでした…。この度はリクエストをどうもありがとうございました!
お読み下さったお客様に、ちょこっとでも髭ちくを楽しんでいただけたなら嬉しいです。
2009.5.12