取り扱い注意!
「ああ!ダンテ、こっち来ちゃだめー!」
の大声に、ダンテはびくりと肩を強張らせた。
「どうした?」
滅多にない絶叫に、バージルまで現れる。
「バージルもそこでストップ!」
制止され、双子はぴたりと立ち止まった。
声を張り上げた彼らの同居人は、何故だか洗面所で這いつくばって、必死に床をペタペタ触っている。
その行動に、ダンテがああとひらめいた。
「コンタクトか」
バージルも納得し、ひとつ頷く。
「また落としたのか」
「ドジだなー」
「こっちはだめだってば!」
つかつか近付いてくる二人に気付き、悲鳴を上げる。
しかし双子は頓着しない。
「バージルはそっち担当な」
「ああ。お前はとにかく慎重に探せ」
範囲を決め、どこかにあるはずのコンタクトレンズを探す。
ペタペタ、ペタペタ。
そうっと探してくれるなら、心強い。
頼もしい助っ人に感謝しつつも床とにらめっこし……それでも探し物は見つからない。
「おかしいなぁ。この辺に……」
「あれ、結構飛ぶぜ。この前は奥で埃まみれになってただろ」
「その前は、まだ外れていないのに勘違いしていたな」
「二人とも、よく覚えてるね」
本当に、そういう都合の悪いことだけは。
不意にダンテが顔を上げた。
「……まだ目に入ってんじゃねぇか?」
「え?」
「見せてみな」
ずいっとの顎を持ち上げて、瞳を覗き込む。
それにバージルがぎらりと反応した。
「貴様」
「だ、ダンテ近いよ!」
「よく見えねぇな……もうちょい近くで」
「「ダンテ!!」」
ぱきん。
「「あ。」」
「……。」
バージルが固まった。
ダンテが腰に手を当てる。
「やっちまったな」
「あーもう、バージルのばかー!」
「これはダンテが」
「慎重にしろって言ったのはどこのどいつだー?」
「どっちもどっち!レンズは二人で弁償ね!」
「「落としたのはおまえなのに」」
こなごなレンズを囲んだまま、三人はうなだれる。
……が、それもほんの一瞬のこと。
「一応、探してくれてありがとう」
「困ったときはお互い様ってな」
「片付けて早く出掛けるとしよう」
三人いれば、どんなときでも不機嫌は長くもたない。
次のコンタクトレンズにも、きっとまた新しい思い出が映るはず。
- → afterword
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長いことお礼にしていた文でした。
コンタクトは飛ぶと探すのが大変で、そんな時に双子がいたらどうなるかなあと。
バージルが割ったことにご感想を頂けたのはうれしかったです〜!(笑)
それでは、短い文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。
2009.4.2