姿が元に戻り、やっと長い説明をできるようになった。
これまでの経緯を全て話すと、は自分と俺を交互に指差した。
小さな口は何かぼやいているが、『それでどうしてこうなるの?』、恐らくそんな事を言っているに違いない。
「分からない」
俺は素直な考えを述べた。
……いや、立場が入れ替わったことに関して、その『一因』には目星がついているのだが……
流石に昨夜俺がした事は言いにくい。
は力なく萎れた。
「朝食にしよう」
小さい相手は、ただそれだけで憐憫を誘う。
暗い表情の彼女はとりあえずそのままに、俺はキッチンへ立った。



狭いキッチンには、ここに見合わない数多くの食材があった。
は手抜きと豪華な日のムラがあるが、料理の腕はいいと思う。
それに何だかんだと俺をからかっていても、食べやすさを考えて食事を用意してくれていた。
(今度は俺の番か)
冷蔵庫を開け、卵にハム、野菜を取り出してテーブルに並べてから、がよく作ってくれていた朝食を思い浮かべる。
オムレツにコールスローサラダ、バケット。この辺りは食べやすかった。
メニューが決まれば、後は準備するだけだ。
料理自体は苦手でもない。
まずまず出来良く焼き上げたチーズ入りのオムレツを二人分に(見た目の比率は物凄いが)切り分け、彼女の方を昨日まで俺が使っていた皿に乗せる。
改めて見る人形用の食器はとても頼りなく、苦心して小さく切り分けたオムレツさえもはみでそうだ。
毎日はこれをしてくれていたのかと思うと……いくら意志疎通が難しかったとは言え、あんなに幻影剣で攻撃して悪かったように思う。
は攻撃手段を持たないのだし、ボールペンにしたって結構重かったから、彼女が文字を綴るのは難儀だろう。
問題がいま一つ。
は俺が何か必要だと注意を引く前に気が付いて、あれこれと話し掛けてくれたが──同じ事が果たしてこの俺にできるのだろうか。
の小人化は、俺より大変そうだ。



「支度出来たぞ」
テーブルに二人の朝食、足元には猫の餌を並べた後も、は元気がなかった。
「まずは食べろ」
出来る限り穏やかに促してみる。
は少し迷って、俺を見た。
そのまま見つめられ……はっとした。
「ああ。すまない、気付かなかった」
彼女は自力ではテーブルに上がれない。
俺は難なく家具を伝っていたので、まるで気が回らなかった。
どうするかと周りを見たが、結局俺は自らの掌を差し出すことにした。
それでもまだ、は躊躇している。
小さい俺しか見慣れていない上に、いきなり立場が逆転では無理もあるまい。
「……来い。」
辛抱強くを見守る。
やがて彼女はおずおずと俺の掌に座った。



夜。
ペーパーウェイトなどまだるっこしい物に頼らなくて良くなった読書を堪能していると、テーブルの上でかたりと音がした。
見れば、はテレビのリモコンと喧嘩している。
固いボタンを両手で押し込むが、数メートル先のテレビは反応しない。
そういえばこの曜日のこの時間、彼女は欠かさず音楽番組を見ていたような気がする。
何度も何度も果敢にリモコンに挑む姿に、不覚にも俺の口元が緩んだ。
が俺を『こびとはこれだから』などとからかってくる度についつい反撃したものだが──確かに、小さい彼女が動く姿は愛らしい。
と、がこちらを向いた。いよいよお手上げのようだ。
「何番だ?」
『これ』はとんとんとボタンを叩いた。
言われた通りに押すが、テレビは反応しない。
「電池切れか」
これでは俺が押そうと意味がない。
「新しい電池はあるのか?」
は大きく頷く。
「どこにある?」
彼女はすぐに指で一点を示した。が、その範囲は俺にとってはとても広い。
「分からないな。戸棚か?」
見当を付けていくつか家具の名を上げたが、そのどれにもは首を縦に振らない。
もどかしい。
痺れを切らし、俺はまた掌を彼女に差し出した。
「連れて行け」
テレビ番組の時間が気になるのか、は今度はあまり抵抗せずに乗って来た。
彼女の誘導の末、無事に新しい電池を探し出してリモコンにセットすると、たったこれだけの作業にも関わらず、俺ももまだるっこしさに疲れを覚えた。
二人同時に溜め息をつき……が笑った。
彼女の姿が小さくなってから、初めて見せる笑顔だった。





が小人化して、最も困る事が起きた。
衣食住、後ろ二つは満たしている。つまり……
「服か」
は必死に頷くと、服をつまんで『着替えたい』アピールをしている。
「これは駄目か?」
俺は以前着ていた衣類を目の前に置いた。
「洗濯してあるからいいだろう?」
が、は首を縦に振らない。それどころか、ぽいと服を脇へ払った。
「おい……」
それは少し傷付く。
「大体、元はおまえが買って来た服だぞ」
もう一度服をの前に戻すと、彼女はその俺の手に触れた。
必死に首を反らし(あれは結構痛い)、じっと見上げて来る。
「……。」
俺が小さい姿のとき、言葉がなくともに言いたいことが伝わるのは何故だろうと思っていたが……今なら分かる。
相手に真剣に向き合って見つめ合えば、大抵の場合は気持ちが通じるのだ。
今、彼女が言いたいことは。
「……分かった。服を買いに行こう」



平日の昼間、百貨店そのものは空いているのに、目的の玩具売り場は子供で賑わっていた。
傍目からは俺が人形の服を買いに来たようにしか見えないだろうが、実は、が俺の胸ポケットに入っている。
いくら何でも「一人で」は無理だったのだ。
出来るだけ何食わぬ顔で人形のコーナーへ移動する。
どれが何やら分からず迷っていると、内ポケットからが僅かに身を乗り出した。
「危ないぞ」
落ちたらどうする──というかそれ以前に、人に見られたらどうするのだ。
彼女はこちらの焦りなど全く気にせず、コートから腕を差し出して俺を誘導しだした。
余計に冷や冷やと気疲れはしたが、無事に人形の服売り場に到着した。
……が、どれも日常生活向きとは言えない服ばかり。
「どうする?」
小声で胸元に問い掛けたとき、
「おにーしゃん」
膝辺りで声がした。
それが女児だと気付き、俺は慌ててコートの前を掻き合わせた。(は多少苦しくなったかもしれない)
「迷子か?」
「おにーしゃんも、ばぁびぃちゃん買うの?」
人形を抱き締め、女児はにっこり見上げて来る。ぎりぎりと激しい頭痛がした。
「いや、違う……」
このままでは戦況が悪い。
また後で来ようと踵を返すも、コートの裾が何かに引っ掛かった。
女児が握り締めている。
「おにーしゃんも、あたしのばぁびぃちゃんといっしょにあそぼ?」
着飾った人形をずいっと見せつけられる。
「だから、俺は……」
この場をどう凌ごうかと後ずさった時、何故か胸元が振動した。が、俺は携帯電話など持っていない。
(何だ?)
……振動はの爆笑だった。
(誰の為にこんな……!)
コートを更にぎっちり掻き合わせて、のいる辺りを押さえ込む。
振動は止まったが、しばらくするとどんどんと胸を叩かれるようになった。
……さすがにきつかったか。少し大人げなかったかもしれない。
手を緩め、謝るように二度ほど胸元を指で叩いたら、どんと強く反応があった。……今度は蹴られたようだ。
「全く」
自然に溜め息が零れた。
ここにいると、との仲は険悪になる一方な気がする。
必要なものを買って、早く帰ろう。
目の前の陳列に目を戻すと、再度コートが引っ張られた。
「おにーしゃん、やっぱりばぁびぃちゃんかうの?」
「……。」
この子供に悪気はない。
俺はバービィ人形とやらの服を前列から適当に何着か手に取ると、しゃがんで女児に目線を合わせた。
遊んでくれるのかと期待しているのには若干罪悪感を覚えるが。
「買う。だが、おまえとは遊んでやれない」
「どーしてぇ?」
女児ががっかりと眉を落とし、唇をへの字に引き結んだ。
その頭をひとつ、撫でてやる。
「家に、俺を待っている子供がいるからだ」
胸ポケットが叩かれた。
俺が気付くかどうかぎりぎり、限りなく弱々しく。



家に着いた時は、心底ほっとした。
ポケットから腕伝いにをソファに下ろす。
自由になった途端、彼女は『早く、早く!』両手を差し出して洋服を催促してきた。
「ほら」
入手するのに苦労した戦利品を並べてやる。
「満足か?」
訊いてはみたものの、満足して貰わないと困るのだが。
まだビニール袋に入ったままの衣類をつらつら見つめた後、はきっと顔を上げた。
ぶるぶる震えて、唇を噛み締めている。
「どうした?」
訊ねた瞬間、はいつか俺もそうしたように、だんと地団駄を踏んだ。
その口が紡ぎ出した単語は、『ヘンタイ!』。
「……何だと?」
流石に今の一言は俺の読唇術のミスだろう。と、祈ったものの。
は怒りながら足元の服を指差していく。『メイド服!』『ブレザーの制服!』『チャイナ服!』『ナース服!』『チアガールのユニフォーム!』
次々と説明されていく衣類のラインナップは、確かに……
いや、だが。
「適当に買ったんだ、俺の意志ではない」
とにかく弁明してみる。
「おまえだって俺にラグビーのユニフォームだのタキシードだのを選んだろう。大体そもそも人形用なんだ、まともな服があるわけがない」
既に俺自身が何を言いたいのか分からない。
ともかく言葉を重ねると、はふうと肩を落とした。
まるで何日か前の俺のようにうろうろと、選びようのない服を見ながら行ったり来たりする。
やがて、渋々とブレザーを指差した。
「どうせ俺しか見ないんだから、大丈夫だ」
果たしてそれが慰めになったかどうか。
僅かな時間の後、は不平たらたらの表情で制服を着て現れた。
「……とにかく、着替えができて良かったな」
何となく直視するのは憚られ、俺は視線を泳がした。
は硬直したまま動かない。
どうせ俺しか喋らないのだが、それにしても沈黙が重い。
気まずい雰囲気をどうにかすべく、当たり障りのない話題を引っ張り出した。
「食事にしよう。何がいい。言ってみろ」
それを聞くと現金にも、の機嫌は一気に回復した。
『オ』『ム』『ラ』『イ』『ス』大袈裟なくらいにゆっくり区切って、注文が告げられる。
オムライス……
「おまえは子供か?」
彼女はつんと横を向いた。
「細かく分けるのが難しい料理だな」
気が変わってくれないかと、ちらりとを見下ろしてみる。
が、俺の手間など知ったことではないかのように、彼女はくるりと向こうへ歩きだした。寝そべった猫の横腹に抱きついてその感触を楽しんでいる。
……仕方あるまい。
卵はともかく、チキンライスはどう分けるか。悩みつつ、俺はキッチンに立った。





どういうイタズラか、バージルと私の大きさが入れ替わってしまった。
私が彼氏にこっぴどく振られて帰って来た、その次の日のことだ。
まさか泣き過ぎてそんなことになってしまったわけでもないだろうし……何が何やらわからない。
バージル自身もよく分かっていないようだ。
本当に不思議。
……不思議と言えば、もうひとつ。
バージルが、まだ私の部屋にいる。
私を不憫に思ってくれているのか、それとも恩返し気分なのか。
定かではないけれど、とにかく、私ひとりを置いて帰る様子はまるで見せない。
──うれしかった。
こびと姿はあまりにも不便すぎて、一人では何にもできない。
バージルが地団駄を踏む気持ちも、青つまようじを飛ばす気持ちも(私はこびとになっても魔法は使えなかったけど)、よく分かる。
今にして思えば、もっと優しくしてあげればよかったとは思う。今さらどうしようもないけれど。
バージルは大きい姿になっても、あんまり喋らない。
必要なときもせいぜい二、三文。
けれど話す声は大抵の場合は落ち着いていて、耳に心地よく……はっきり見えるようになった深い海の色の双眸と相まって、私は不覚にも何度もときめいてしまっていた。
とどめは、彼のてのひらだろうか。
移動できる範囲が極端に狭い私のために、バージルはよくてのひらに乗せてくれた。
私が乗りやすいようにてのひらを差し出す、掴まりやすいように軽く指を曲げてくれる、動かす時も慎重に……このときばかりは一連の行動が妙に優しい。
……だから、私は別に用事がないときもよく彼の袖口を引いた。
「またか」
読みさしの本に栞を挟んで、バージルがやれやれと首を振る。
いやいやながらも、彼のてのひらはあたたかい。



──この気持ちは、どう呼べばいいんだろう。
パジャマ代わりのチアガール服に着替えて、ハンカチのベッドに潜り込んだ後、私はぼんやりと考えた。
今日の夕食は、私が注文した通りのオムライス。
あんな面倒なのをどうやって出してくれるのかと思ったら、私の分のチキンライスは細かく刻んでくれてあったし、ご丁寧にちいさい卵焼きもちゃんと乗せてあった。
こびと時代から器用かもしれないと思ったことはあったけど、バージルはどうやら本当に器用なようだ。
バージルのオムライスはおいしくて、しあわせにお腹を満たしてくれた。
……正直言って、彼は私にここまでしてくれる必要はないと思う。
私の姿に何らかの責任を感じているとしても……
そっと、横のバージルを窺ってみた。
私が動きやすいように、どんなときでも彼は傍にいてくれている。
もとは私のベッドの上、こちらに背を向けるようにして眠るバージル。

私がこの姿のままなら、バージルはずっと一緒にいてくれるのだろうか

(え?)
ふと兆した想いに、自分でびっくりした。
私はバージルを好きなのだろうか。
こびとだのキミだの、軽くあしらってばかりいた、バージルを──
ばさり。バージルが寝返りを打った。
綺麗な顔が私に向けられる。
今はしっかりと閉じられてしまって、見えない青い瞳。
「バージル?」
私はすこしだけ不安に駆られた。
バージルがこのまま起きなかったらどうしよう。
そんなのは馬鹿げた考えだとは分かっている。けれど……
考え出したらどうしても堪らなくなって、私はするりとハンカチを抜け出した。
掴まれる物は何でも必死に手繰って、バージルに近づく。
ようやくベッドに辿り着いた。
「バージル?」
こうして呼んでみても、彼には聞こえないだろう。きっとその方がいい。
「バージル」
もう一度呼ぶ。
「ん……」
まさか聞こえてはいないはずだけど、バージルがわずかに身動きした。
その拍子に、毛布から左腕が投げ出された。顔の近くに置かれた、ちょっとだけ丸められたてのひら。
(……すこしなら、いいよね)
抗いがたい誘惑に、私はそうっとバージルのてのひらに乗った。
ますますバージルの顔との距離が近くなる。
今なら、触れそう。
私はバージルのおでこにそうっとキスをした。





胸が重くて目が覚めた。
猫が餌をねだって来たのだろうと下を見ると……想定外の物体が乗っていた。

……!?」

俺にぴったり乗ってぐっすり眠っているのは、紛れもなく。それも、掌サイズではなく、普通の──
「……。」
思考が数分、空回りした。
どうしてこんな体勢になっているのか。
ここからどう彼女を起こすべきなのか。
……考えても分からない。
いや違う。
その規則的な心拍数を感じる程に密着したの身体が、俺から冷静な判断力を奪っている。
(驚かさずに起こすなど、どうせ無理だ)
俺は考えることを放棄した。

投げ遣りに彼女の肩を揺らす。
「起きろ」
何度か繰り返すと、ようやくの瞼がぴくりと動いた。
「う……」
俺の胸に手を置いてゆっくり身体を起こす。
「起きたか?」
「うん……」
「とりあえず、俺の上から降りてくれないか」
「あ、ごめんね」
この反応。
自分の姿が戻っていることに気付いていない。
まあ、俺もそうだったから無理もない。
出来るならもう少し気付かないでいてくれれば、
「きゃあああぁぁぁ!!」
「っ!」
……俺の願い届かず、事態を理解して暴れたの膝がまともに腹にめり込んだ。
「ななっ何でぇ?!」
は慌てるあまりに、背中から床に落ちそうになっている。
「まままさか、二人ともこびとに」
「なっていない」
「え、でも私」
「とにかく落ち着け」
ここはベッドの上だ。落ち着けと言う自分も落ち着けない。
「居間に行こう」



ソファに座らせ、紅茶を淹れてやると、も少しは冷静になった。
湯気を立ち上らせる人間用の大きさのカップを感慨深そうに両手で包み込む。
「……どうして戻れたのかな」
互いに同じ大きさでの会話はこれが初めてだ。
どうしても気まずい。
おまけに、話そうとしていることは少々複雑で……
「……。」
俺がこの姿に戻った夜のことは、まだには話していない。
もしも切っ掛けがあったとしたら『それ』しかないのだが、そうなると、今朝が戻れたということは、つまり──
そっと目を上げてを窺う。
「……昨夜、何か変わったことをした記憶は?」
狡い。自分でも狡いと思うが、訊ねてみる。
案の定、彼女は頬を赤く染め、不自然に目を泳がせた。
「べ、別に何もしてないと思う、けど?」
あからさまな嘘。
込み上げる笑いを噛み殺して、俺はゆったり脚を組んだ。
「そうか。俺は『あれ』が切っ掛けだと思ったんだがな」
「きっ気付いてたのぉ!?」
は勢いづいて席を立つ。
まんまと引っ掛かってくれた。
どうやらも、俺に小さな悪戯をしてくれたようだ。
沸々と沸き上がる嬉しさは、まだ俺しか知らない味。
独り占めしておきたい気もするが……いくら何でもそれは狡すぎる。

緩みそうな表情を引き締め、出来るだけ真剣に彼女を見つめた。
「この姿に戻れた時、俺は昨日のおまえと同じ気持ちで同じことをした」
の目が丸くなる。
「え、だって」
「触れたいと……思わなかったか?」
立ち上がって、の頬に指で触れる。
「俺は思った」
「バージル……」
は俺の掌に手を重ねた。
「私も思った。ずっと一緒にいてくれないかなあって」
彼女の言葉に、胸の奥が熱く騒ぐ。
『勿論』──そう答える代わりに、俺は軽口を叩いた。
「おまえが男の寝込みを襲うような女だったとはな」
途端にが俺から離れた。
小人の名残か、だんと地団駄を踏む。
「あっあれは!ただちょっとてのひらにお邪魔したら、気持ちよくってついそのままうとうとと」
「分かる。おまえの隣は心地いい」
ぐいとを強引に抱き寄せる。
彼女の腕は暴れようか殴ろうか迷った挙げ句に、俺の背中に回された。
互いに、知らない感触。
相手の好きな本もテレビ番組も知っているのに奇妙ではある。
「色々あって、散々だったな……」
「うん。でも、結構楽しんでたよ」
そっと身体を離し、に目を合わせる。
一方が小さい姿ではなく、こんな風にしっかり見つめ合うのも初めてだ。
……照れが含まれるだけ、意思の疎通は今までより難しくなるかもしれない。
「とりあえず……」
「何?」
がゆっくりと俺を見上げてくる。
──今すぐにでももう一度抱き締めたい、のだが。
俺は溜め息と共に彼女から目を逸らした。
「小人の服は着替えた方がいいな、『チアリーダー』?」
「っ!!」
ぱんと乾いた音が、俺の頬に響いた。
「バージルのヘンタイっ!」
「おい!」
はばたばたと自室に駆け込んで行った。
元に戻って俺は彼女に幻影剣を使えなくなったが、は平手打ちが使えるようになってしまったか。
「全く……誰が変態だ」
仏頂面のまま、打たれた頬に掌を当てた。

──人間サイズになってからも、ふたり揃うと騒がしいのは相変わらずのようだ。







→ afterword

大変遅くなりましたが、9万打お礼の夢でした!

バージルがてのひらサイズ!
これはお友達の管理人様が最初に萌えを提供して下さったのが始まりでした。
それから妄想がどんどん膨らんで、小さいバージルが騒ぐだけではなく、いつの間にかタイトルを裏切ってヒロインが小さくなり…でもバージルのてのひらの上にも乗りたかったんだよ!
めちゃくちゃですが、書いていてものすごく楽しかったです。
本編では二人とも大きくなってしまいましたが、日記では小さいバージル(そしておまけでダンテも)の小話も書いていこうと思っています。
青つまようじ万歳です(笑)

それでは…ここまで読んで下さいまして、本当にありがとうございました!!!
2009.2.8

追記)
ついにネロくんにまで伝染してしまった、このこびと編。
バージルさんに対して「キミ」呼ばわりだの、平手打ちだのできるのはこのシリーズだけ。
そういえば再掲にあたって、お人形服のカクテルドレスをナース服に格上げしました。ごめんねバージルさん。
また拍手お礼などで書いていきたいです。