てのひらバージル

メリークリスマス編




「どうかした?バージル」

夕食の支度で忙しい時間。
何を思ったかバージルは、スープに入れようとしていたアルファベットのマカロニをいじっている。
筆談のためのボールペンは、今は貸していない(なぜなら彼はすぐ刺してくるから)。
だから、マカロニで何か伝えたいのかもしれない。
「なになに?」
つつつ。
バージルは「M」を皿に寄せた。
きょろきょろ周りを見渡して、次は「E」。
「あー、はいはい」
わかったわかった。
「はい、A。ごはんの催促でしょ?」
Aをバージルの前に移動してあげたら、
すぱこーん!
「痛っ」
投げ返された。
MEALではないらしい。
「もう!何よ」
むすっと見つめる視線の先で、バージルはどんどんスペルを組み立てていく。
(あ。)
……ちょっとときめいた。
なかなか可愛い文章を作ろうとしている。
でも、鍵となる1文字が見つからないらしく、バージルは不機嫌にうろうろしだした。
……仕方ない。手伝ってあげよう。
「お探しのアルファベットは、これですか?」
私はその1個を指でつーっとバージルの足元に置いた。
彼はちらりとこちらを見上げて、ちいさく頷いた。
最後の「X」を足して完成したのは、

「MERRY XMAS」

──今年のクリスマスは、なんだか楽しくなりそうだ。



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